國廣 勇人(衆議院常任委員会専門員・国土交通調査室長)
令和7年2月23日に、福島県の東日本大震災・原子力災害伝承館及び請戸小学校を訪れた。
長男は大学院をこの春卒業し、社会人になる。忙しくなる前に、是非、被災地の生の姿を見せ、生の声を聞かせたいと思い同行させることとした。

常磐線の特急で双葉駅で降りた。
単線になっており、線路は1本しかなく、ホームは1面だけであった。

初めに、東日本大震災・原子力災害伝承館(館長:高村 昇 長崎大学原爆後障害医療研究所国際保健医療福祉学研究分野教授)に訪れた。伝承館は、昨年の7月に来館者数30万人、1月26日には35万人を記録している。菅元総理大臣をはじめ、我が国の国民はもちろんのこと、多くの国々の要人も訪れている。
当日は、館の入り口に、高さ約4メートルの巨大ダルマが設置されていた。これは、東日本大震災前に双葉町の新春恒例行事「巨大ダルマ引き」で使われ、震災と東京電力福島第一原発事故の影響で町役場旧庁舎倉庫に眠っていたものである。

また、当日は、「長期避難と祭り~伝統文化がつなぐ地域住民の絆~」との企画展が開催されており、震災と原発事故の被災地である双葉郡8町村と飯舘村で、民俗芸能の復活に取り組む団体代表へのインタビューや活動年表などをまとめたパネルや神輿、獅子頭などの実物、伝統芸能の映像など計約100点が展示されていた。
さらに、「ふたば、いいたて民俗芸能大集合」のイベントも開催されていた。これは、普段はそれぞれの地域で上演されている獅子舞や神楽を一つの会場で観ることができるもので、当日は、双葉郡で活動している太鼓団体による「太鼓たたこう」ワークショップも開催されていた。訪れたときには、大きく躍動感のある太鼓の音が鳴り響いていた。
このように盛りだくさんのイベントがある時期に訪れたのは幸運であった。
到着して、まず、昨年亡くなられた俳優の西田敏行さんのナレーションで展開されるオープニングシアターを観た。福島の被災前と被災後の状況について、被災前は原発で町が栄えてきたこと、被災後は震災と原発の事故で多くを失ったことを独特の語り口で紹介されていた。はじめは丁寧な標準語であったが、徐々に福島の方言を用いた説明になり、思わず聞き入ってしまった。
→後編に続く
國廣 勇人(くにひろ はやと)さん

プロフィール
1988年に衆議院に入り、議事部請願課長、委員部副部長、決算行政監視調査室首席調査員、国土交通調査室首席調査員を経て、2024年1月衆議院常任委員会専門員・国土交通調査室長となる。著書に、「EBPMの現状と課題―国会はEBPMにどう向き合っていくべきか―」(2022年)、「災害伝承を取り入れた学校現場での防災教育」(2024年)(いずれもRESEARCH BUREAU 論究 衆議院調査局発行)がある。2025年より衆議院論究企画編集会議座長。防災士、気象予報士。